住みやすい街をめざして

会長

七尾市医師会会長 奥村義治

早いもので、石川県に移り住んで45年、七尾の地に来て30年余が経ちました。高校時代まで京都で生まれ育った私が、能登の地で生涯の大半を過ごす事になるとは、大学卒業の時点でも予想だにしていなかったことです。ましてやこの地域の開業医に、なるなどという事は頭の片隅にもありませんでした。今、この地にあるのはこれまで出会う事ができた色々な方とのご縁やお蔭としか言いようがありません。この地を終の住処にしようと決めたのは、何よりも「能登はやさしや土までも」を身近に感じ、私にとって居心地が良かったからに他なりません。


その能登の過疎化は大変なスピードで進んでおり、医師の減少も例外ではありません。私が七尾に初めて訪れた昭和50年代後半には、半島の中心地としてある程度繁栄しており、人口の割には医師の多い街、という印象を持ちました。当時は、七尾市内・鹿島郡内の各地区に必ずと言ってよいほど医療機関が存在しました。その後は新規開業もありましたが徐々に閉院が目立つようになり、私が平成29年に会長職をお引き受けした前年辺りから、高齢などを理由に一気に5カ所の医療機関が閉院となりました。これは人口の減少の更に上を行く速さです。


国は2036年度を目途に、医師の偏在解消を目指す「医師確保計画」を2020年度からスタートさせますが、各都道府県には2019年度中にその医師確保計画を作成する事が求められています。今年の2月に厚生労働省は、その指標となる医師偏在指標を発表しました。その数値をみてみますと、都道府県別では石川県は第7位(指数270.4)で医師多数区域に入っています。県内に2つの大学がある状況からすれば納得できる順位です。さらに二次医療圏別では能登北部が92.9(全国335地域中320位)と下位1/3の医師少数医療圏、能登中部は指数155.1(同195位)の中間位でした。ちなみに石川中央は361.6(同16位)で上位1/3の医師多数医療圏に入っています。


この指数からしますと能登中部は医師がさほど不足していない、という事になり、現実とは少しかけ離れているという印象を持たざるを得ません。確かに七尾は2つの総合病院と専門医療に特化した独立行政法人国立病院機構の病院があり、病院医療には恵まれた環境にあります。ところが地域の窓口となりうる開業医(かかりつけ医)の減少は先に述べたように急速に進んでおり、医師会内の対象人口72,000人に対して、小児科、耳鼻咽喉科、皮膚科など、1件で奮闘している診療科もあって医師偏在は著しいものとなっています。


一人の開業医が在宅医療をはじめ、学校医、警察医、産業医、施設医など何役も務める状況は、過疎化の進む地域ではおそらくどこでも当たり前になっている姿かと思います。本来の診療以外の地域活動は、この地域で開業している限りは、原則全員参加を建前としています。しかし過疎地域における開業医の負担はますます増えており、今後は開業医の疲弊をいかに減らすかということも医師会の重要な役割であると考えています。


これまで、当地では総合病院や専門に特化した病院には本来の機能(救急医療や回復期医療、特定の疾患に対する医療など)を十分発揮して頂けるような連携を目指し、良好な関係が築かれて参りました。また今までも開業医だけでは対応しきれない在宅医療や学校医などの役割の一部を病院の先生方にお願いしておりました。今後は更にその役割分担の負担増をお願いしなければならない状況に達しており、病院にどの程度の負担をお願いしてよいものか、現状を分析した上で、十分し合っていかなければならない事と考えています。


医療・介護の充実は、その地域の住みやすさを示す上で非常に重要であり、その質はもちろん、地域の規模に応じた量も確保・維持しなければなりません。県の作成する医師確保計画案を待つのではなく、当地でできることは始めなければならないと思っています。


現在、2つの総合病院では2004年から始まった臨床研修制度の下、多くの研修医の皆さんが予め決められたプログラムに沿って様々な診療科での2年間の研修に励んでいます。そのプログラムの中に地域の診療所での研修を加えて頂けると、病院と診療所の連携をつぶさに見る事となり、更にこの地に興味を持って頂けるのではないかと思っています。そしてこのような経験の中から将来、当地で働きたいという人が出てきて欲しいという希望も抱いています。また、これからの医師会は医療・介護関連以外の色々な職種の方々との連携や意見交換も行っていかなければならないと考えています。この地に住む人が医療・介護をどの様に考え、何を期待しているのかも知らなければなりません。


住民の皆さんの制度や体制に対する不満は、医師会が政治や行政に伝える責務があります。住民の満足感は地域を繁栄させ、繁栄した地には医師が集まるのは自然の事かと思います。


住民の皆さんにとって安心して暮らせる街をめざして、七尾市医師会は全面的に尽力したいと考えています。